Japan

CIRSE 2018

『Congress Topics(CIRSE 2018)』国立がん研究センター中央病院 放射線診断科 菅原俊祐先生

 今年のCIRSE(Cardiovascular and Interventional Radiological Society of Europe)2018は、ポルトガルの首都リスボンで9月22日(土曜日)から25日(火曜日)の4日間にわたって開催された。この時期のリスボンは、日中の気温は30℃を超え、湿度は高くないながらも屋外では汗ばむ陽気であった。しかし会場内の冷房は存外強すぎず、欧米の学会にありがちな“会場で凍える”ことはなく、学会に集中することができた。また、夜間〜朝にかけては20℃前後まで気温が下がり、地中海気候のイメージ通り非常に過ごしやすい環境であった。

 会場(写真1)はリスボンの中心部から少し西へ移動したエリアにあり、主要ホテルからシャトルバスが朝と夕に運行していた。運の悪いことに、会期中にリスボン市内でタクシー運転手によるストライキ(Uberなど配車アプリに反対するため)があり、市内の移動はトラムや地下鉄を乗り継がざるを得なく、非常な不便を強いられた。このタクシーのストライキにより、空港から市内への移動にも大きな支障をきたしており、到着した日の夜にホテルへたどり着くために非常に難渋された参加者も少なからずおられたようである。

 日本からの参加人数は30人前後と見受けられた。日本からの講師としては、国立がん研究センター中央病院の荒井(保明)先生、奈良県立医科大学の吉川先生、大阪大学の大須賀先生ら日本でもおなじみの先生方が名を連ねておられた。また、ポスター発表では日本から複数の先生方がCum Laude、Certificate of Meritを受賞されており(写真2)、本邦からの業績がアピールされ非常に誇らしい限りであった。

 今回のCIRSEで、私が主に参加したinterventional oncologyを主体とした分野(PTAやEVARなどの領域には十分な情報収集はできなかった)では大きな目玉となるトピックは見当たらなかったが、セッションの配置やテーマにはそれぞれ工夫が凝らされていた。IVRの主要なトピックはもちろん、その他にも鎮静についての参加型セッション(事前予約が必要)や“IVRをどのようにアピールし、マネージメントするか”についてのセッションなどがあり、後者ではIVRセクションのホームページを作成するポイントや院内・院外における啓発活動、他科とのターフ・バトルの乗り切り方などについて実地的なディスカッションがなされ、ヨーロッパのIVR医が何で悩み現状についてどのように捉えているのかが伝わる興味深いセッションであった。

 ワークショップなどでは、CIRSE公式アプリをダウンロードすることでアプリを介して質問をすることもでき(もちろん挙手による質問も可能)、寄せられた質問の中から座長がピック・アップして演者に質問を投げかける場面も多く見受けられた。残念なこととしては、なぜか壇上のライトはほとんどの会場で終始明るいままであり、そのため肝心な発表モニターが非常に見えづらい状況であった。

 ハンズ・オンは生検や各アブレーション、closure deviceなどのセッションが設けられており、事前の予約が必要ながら無料で参加可能であった。しかし、説明には主に企業からのスタッフがあたっており、デバイスの仕組みを理解するには問題なかったものの、技術的もしくは疾患ごとの適応などについて詳細な質問についてはなかなか掘り下げることは難しいと感じられた。

 また、本邦ではまだ広くは施行されていない骨軟部領域のアブレーション治療や前立腺肥大に対する塞栓術(PSA)についてのセッションも充実していた。デバイス・ラグについては以前よりも欧米との距離は縮まったと感じているものの、保険収載の縛りによりこれらの領域については置き去りにされている感は否めなかった。

 その他、最終日にはSuper Tuesdayと題したエビデンス・レベルの高い発表をセレクトしたセッションもあり、肝切除術前の門脈塞栓と肝静脈塞栓のコンビネーションや、米国からの変形性膝関節症に対する動脈塞栓術の前向き試験など、分野を超えて注目すべき発表をまとめて聞くことができた。

   全体として、風光明媚なリスボンで開催されたCIRSE 2018は全体の構成がよく練られ、良い点でも悪い点でも日本との差を感じることのできる、なおかつ興味あるトピックについても効率よく学ぶことのできる学会であった。来年のCIRSE 2019はスペインのバルセロナで開催予定であり、来年からは日本IVR学会のグループ・レジストレーションも適応され費用の面からもより参加しやすくなるため、さらに多くのIVR医が日本から参加し、本邦からの業績のアピールと全体のレベルアップに貢献できるものと期待される。

 

 写真1                      写真2

『Congress Topics(CIRSE 2018)』 産業医科大学 放射線医学 掛田伸吾先生

 2017 年9 月16 日~20 日にポルトガルのリスボンで開催されたCIRSE2018に参加した。私にとっては初のリスボンだが、シルセでは2015年に次ぐ4回目である。会場のConvention Center は4月25日橋のたもとにあり、白い石畳を海沿いに少し歩けば世界遺産であるジェロニモス修道院がある。学会期間中にタクシーの大規模なストライキがあったが、主要なホテルから会場への定期シャトルバスがあり不便さは感じなかった。

 初日に行われたOpening and Award ceremonyは、幻想的なダンスで演出されたモダンなものだった。Award ceremony では、Anna-Maria Belli先生がGold Medalistを受賞された。Belli先生は、末梢血管内治療のデバイス開発や産科出血をはじめとした止血IRなどで多大な業績をあげられたことに加え、2013年から2015年まで女性初のThe Cardiovascular and Interventional Radiological Society of Europeのプレジデントを務められた。Belli先生は、開会式の直前に行われたセッション「Women in IR: The IR gender gap」のモデレーターも務められ、女性の社会進出が進むヨーロッパにおいてもIRを専門とする女性医師は極めて少なく、女性の視点に立った職場環境の整備の重要性を述べられた。今回のプログラムでも女性の講師は多く、女性の活躍に取り組むCIRSEの強いメッセージを感じた。また、女性演者の一人は、家庭とIR業務の両立を可能にするキーポイントに「相談できる上司」と「女性IR医師のロールモデルの存在」をあげており、我々もまずは意識改革から始めるべきと感じた。

 昨年の荒井保明先生のDistinguished Fellow受賞のようなBig Newsはなかったが、日本からのポスター発表での多くの受賞はたいへん誇りに感じた。久保貴俊先生らは、TACEにおける造影CTデータを用いた腫瘍アクセスルートの自動検出システムの開発でCUM LAUDEを受賞された。最近、コーンビームCTを用いたシステムの報告(JVIR 2018;29:425-431)があるが、精度についてはCTデータを用いる方が利点は多いと思われる。さらにCertificate of Merit を受賞した5演題のうち4演題が日本からであった。なお、韓国のJ.H.Park先生らの演題が、実験室レベルのステント研究でMAGNA CUM LAUDEとCUM LAUDEの2つを受賞したことは特筆すべきである。

 企画としては、日本IVR学会総会で恒例となったM&M(mortality & morbidity)カンファレンスや見事に治療した困難ケースを提示するAmazing Interventionsはとても楽しめた。またCIRSE として放射線防護に取り組んでいることを感じさせる企画に、機器展示会場のRadiation protection pavilion という区画がある。ここでは、各メーカーが放射線防護に関する取り組みについてブースを出すと同時にプレゼンを行っていた。身近な話題とは言い難いが、昨年同様、前立腺動脈塞栓術(PAE)への関心は高い。最近、国立医療技術評価機構(NICE)は、前立腺肥大症治療ガイドラインを改定し、良性前立腺肥大症に対するPAEの施行を推奨すると発表した。手技成功の重要な因子に正確な前立腺動脈の同定と灌流範囲の把握があり、前立腺動脈の分岐のバリエーションや側副吻合路の解剖についての講演は多くの聴衆を集めていた。肝腫瘍に関しては、Lesson from RCT studies in liver cancer というセッションで、The European SARAH Studyにより、放射線塞栓療法(イットリウム90 radioembolization:国内未承認)とソラフェニブ 治療群の結果、Randomized phase II EORTC 40004 CLOCC studyにより、抗がん剤単独群と抗がん剤+積極的局所アブレーション併用群の比較検討など最近のエビデンスが紹介された。今回も橈骨動脈アクセスに関しての講演が多く、動脈穿刺デバイスの展示も賑わっていた。肥満患者が多い欧米の話題と考えてしまうが、患者の負担軽減や術者の被曝低減などの利点があることは認識しておくべきと思う。

 初日の夜には、日本からの参加者のパーティー「Japan Night@Lisbon 2018」に参加した。多くの先生と活気ある率直な意見交換ができ本当に楽しかった。平成31年5月30日~6月1日、当教室の興梠征典教授を大会長に福岡国際会議場で第48回日本IVR学会総会が開催される。ここで得られた貴重な情報を活かし誠心誠意準備をしたい。

  

写真1 左から順番に筆者、興梠教授、村上先生     写真2 Japan Night @ Lisbon 2018での様子