Japan

ESUR 2018

『European Society of Urogenital Radiology (ESUR) 2018 学会参加報告』    川崎医科大学 放射線診断学教室 山本 亮先生

 第25回European Society of Urogenital Radiology (ESUR) はスペインのバルセロナで開催されました。今年は開催地が観光の名所バルセロナであったからか、参加者数は500人と例年に比べやや多く、3か所設けられた会場は例年にも増しても賑わいを見せている印象でした。バルセロナといえば、今もなお未完の大作であるサグラダファミリアを代表とする建築家ガウディーの建造物が有名な世界でも有数の観光都市で、年間3200万人とバルセロナの人口の20倍に及ぶ観光客が訪れるそうです。また、サッカー観戦が好きな私にとっては、世界でもっとも有名なサッカー選手メッシが所属する世界最強のサッカーチームであるFCバルセロナのホームタウンとしてもなじみのある都市です。本年のESUR開催地がバルセロナと知って以来、FCバルセロナのサッカー観戦を非常に楽しみにしていましたが、残念ながら学会期間中に開催された試合はアウェー(敵地)であり、その夢は叶いませんでした。しかし、パエリアなど魚介類をふんだんに使用したスペイン料理は非常においしく、またスペイン人が陽気で非常に親切であり、あらためてバルセロナの魅力を感じることができました。

  さて、本年のESURでもっとも興味深くきかせていただいたのは、膀胱癌の新たなレポーティングシステムであるVI-RADSのセッションでした。大阪医科大学の鳴海善文先生がモデレーターをされ、ラジオロネット東海の竹内充先生が膀胱癌のMRI画像評価についてのご講演をされました。VI-RADSは膀胱癌における筋層浸潤の有無の評価を目的としたものです。筋層浸潤の有無により膀胱癌の治療はTUR-BTか膀胱全摘かが決定されますが、この両者は手術の侵襲性や術後のQOLが大きく異なることから非常に重要な術前診断です。膀胱癌の筋層浸潤の有無の画像評価に関してはこれまで多くの論文が報告されておりますが、それらをレポーティングシステムとして系統的に評価できることは臨床的に非常に有用なものであり、竹内充先生のご講演では、多くの症例提示により具体的に講演いただき、非常にわかりやすい講演でした。筋層浸潤の判定に関しては個人的にも非常に悩むことが多かったため、非常にためになる講演でした。ただ、ある程度の修練が必要だと思われ、今後のワークショップなどの開催により世界に浸透していくことが期待されました。

  腎細胞癌のセッションは毎年ESURで組まれているセッションです。腎細胞癌は近年の分子標的療法の発展により治療選択の幅が広がっており、腎細胞癌の組織型診断も重要となっております。マルチパラメトリックMRIによる組織型診断の報告も多くみられており、本講演では良悪の鑑別から組織型診断に至るまで、画像所見の知識の整理ができるわかりやすい講演でした。腎細胞癌に対してのアクティブサーベイランスに関する内容もありました。実際に日常臨床でも5年ほどの経過でほぼ大きさが変わらないような腎癌を経験することがあり、年齢や患者背景を限定したうえでアクティブサーベイランスを選択することは手術のリスクやQOLを考えた場合に正しい選択であると思われます。ただし、腎細胞癌の中でも急速に増大したり、多発性に転移したりする悪性度が高いものもあるため、発育が遅く、転移しない腎細胞癌とそうでない腎細胞癌の画像所見を明確にすることが重要であると思われました。実際の臨床の現場において腎細胞癌のアクティブサーベイランスという概念が浸透するのには、患者心理も含め時間がかかりそうではありますが、泌尿器科医と十分に協議したうえで明確な基準が確立することが重要であり、放射線科医としては画像の適応基準を明確にすることが重要な役割と考えられました。

  ESURは規模の大きな学会ではないですが、そのぶん議論も活発で非常にためになる学会です。来年はアイルランドのダブリンで開催されます。日本人にはあまりなじみのない都市ですが、ESURに参加することによりいろいろな都市に行けることも楽しみの一つであり、さっそく来年のESURの発表演題のテーマを練ろうと思っております。  

 

収容人数約10万人のFCバルセロナのホームスタジアム Camp Nou