Japan

ISMRM 2018

『2018 ISMRMに参加して』 札幌医科大学医学部放射線診断学 畠中 正光先生

 ISMRM直前にノルウェーのベルゲンで日本スカンジナビア放射線医学協会の2年に一度のmeetingに参加し、続けてパリに移動しての参加となった。札幌暮らしも6年を超えたので寒さには少し慣れたつもりだったが、ベルゲンは寒い。この時期でも軽めのダウンジャケットを着ている旅行者(?)が沢山いた。パリは光があふれ何より暖かい。光を求めファン・ゴッホが移り住んだ気持ちがよくわかる。オランダ人のゴッホにとってはパリはすぐ近所のような気もするが? さて、ISMRMの話である。この学会は教育講演が充実しているばかりでなく、最新の情報にも接することができるので参加するのを楽しみにしてきた。しかし、どうも最近は商業主義が強くなってきたのか、次々と新たな技術は発表されるがどうも実際の臨床に役立つかどうか眉唾的なものも少なくない印象である。実は3月にニュデリーで開催されたWorkshop on Quantitative Body Imagingにも参加したが(日本人は私一人だった)、PhDはArtificial Intelligenceとどう付き合ったらよいかといった議論が真剣に行われていたりして放射線診断医としてはあまり興味がわかなかった。今回も高評価ではあるが臨床にはどう応用すればいいんだろうといった演題が少なくもない。

 そういった中で京大の飯間先生の演題は白眉と感じた(白眉センターとかけたつもりです)。「Time makes the difference: Comparison of ADC values obtained with OGSE and PGSE sequences for differentiation of human breast tumors (4329)」「Time makes the difference: Comparison of ADC values obtained with OGSE and PGSE sequences for differentiation of human head and neck tumors (3670)」

 ハイエンドの3TMRI装置を用いて同一のb-valueに対し2種類のdiffusion time(OGSE vs. PGSE, 理解が正確ではないかもしれません)を用いることで、プロトンの拡散が温度や粘性の影響のみを受けると考えられるファントムや嚢胞と細胞膜等の拡散を制限する構造の影響が強いと考えられる生体(悪性腫瘍・良性腫瘍・正常組織)のADC値の変化を比較した研究である。結果は予想通り、制限構造が疎な場合はADC値がほとんど変化しないが、細胞膜等による制限が考えられる正常組織・良性腫瘍・悪性腫瘍ではこの順序でdiffusion timeが長くなるとADC値が低下し、正に制限拡散の強さを示していると考えられる。強力な傾斜磁場がないと、元々の最短diffusion timeが相当長いので、これを変化させるとさらに延長せざるを得ず、TEも長くなってしまい信号自体が減衰してデータにならなかったが、ついに臨床機でも可能になったのかと一寸感動してしまった。T1やT2緩和と異なり、拡散現象は光学顕微鏡レベルの構造を理解するのに適していると考えてきたが、最近あまりわくわくすることがなかった。これぐらいはっきりとした差が出るのなら、diffusion timeを色々振って、各制限構造の分布(距離)も計算できやがては回折のようにマイクロメータレベルの立体的構造を解き明かす顕微鏡のように使えると妄想してしまう。やっぱり来年も参加しよう。

 京都大学 飯間麻美先生             ドラクロワ 民衆を導く自由(の女神)

  

  時代を拓くのはいつも女性。寿命もずっと長いし、官民挙げてWomen's Empowermentって?短命の男性こそ保護すべきでは。自由(の女神)に踏みつけられそうなのは男性ばかりのように思うのは私の僻みでしょうか。

『I(アイ)のつく話題三つ; AI、DIそしてfluid』 京都府立医科大学放射線診断治療学講座 山田 惠先生

 今年の ISMRM の話題を幾つか挙げよと言われれば、その中にどうしても人工知能(AI)は入ってくる。昨今,どの学会に行っても話題の中心だが今回のISMRMでも同様であった。とにかく毎日どこかで人工知能のセッションが存在した。学会冒頭のweekend educational(6月16-17日)では私自身が企画したAnalyzing the Brain: New Paradigmsでも AI を一部取り上げた。同セッションと並行して別の部屋でも午前中を通してAI だけを題材としたプログラムが存在したというありさまで,私の招待したProf. Erickson (Mayo Clinic)は両方で演者として登場している。

  会場を離れてもAI の話題は花盛りで,例えば私が月曜夜に参加した,あるベンダーの会合(ゲルベ主催の会の裏番組です,申し訳ありません)でも立食パーティーの話題のナンバーワンは人工知能であった。シンプルなcomputer assisted diagnosis (CAD) は日常臨床の中にすでに活用されているようであり、イギリス人の友人(Prof. Padhani)はすでにルーチンとして使用しているとの事であった。PACSに装備されている肺結節の自動検出機能を使うと読影時間が大幅に短縮するとのことである。

  さて紙面にも限界があるので、二つ目の話題である DI に移りたい。水曜日午後の会員提案型のシンポジウムに参加された人はどれぐらいおられるだろう。タイトルはRESONATE: A Discussion on Social Biases Within ISMRMというものである。プログラム委員会でこれを採択するか否かに関してかなりの時間をかけて議論が行われた。デリケートな問題であり,中途半端な企画は危険だという議論があったのだ。このように採択には賛否両論があったがプログラム委員長(Prof. Miller)の英断で実現した。

 このシンポジウムで紹介された表現の一つがダイバーシティ&インクルージョン(D&I)である。様々な異なるバックグラウンドを持つ人達を包含するようにして組織を形成する方が、より健全で生産性の高い組織となるという文脈でこの表現が使用されている。このセッションではいずれも話の上手な人が登壇しており,通して聞く価値のあったプログラムの一つだったと思う。特に印象的だったのがProf . Nayak の話である。インド系アメリカ人としてアメリカ南部で育った幼少時からの「偏見」に関する経験を語ったのだ。常に自分の gut feeling(直感)に従ってまっすぐ生きてきたと述べた上で,その直感自体がバイアスの源になっている可能性に言及した。直感だけに従わず,常に自らの判断を内省する態度をもって物事に望む必要があることを力強く語った。一方で,「人間なのだからgut feeling を持つこと自体に問題はない。完璧な人間などいないわけだから」という視点を付け加えた。何かと息苦しい,このご時世に生きる我々に安心感を与えるコメントだったと思う。

  最後に三つ目の話題として手前味噌ながら,最終日(木曜日)の教育コース,What You Need to Know about Neuroinflammation & the Glymphatic Systemに関しても少し紹介しておきたい。この教育セッションは私とProf. Sundgren(次期会長)が合同で企画したもので,最終日の午前中にしては,かなりの人が入っていたと方だと思う。特に圧巻だったのは田岡俊昭先生の拡散強調画像を用いた脳間質の液体(fluid)の動きを評価する手法で,極めてユニークな着想として注目を集めた。散会後も多くの人が演者席の周りに集まり質問の嵐であった。この際に演者が全員揃ったところを大阪市大の三木教授に撮影戴いた写真を掲載する。

  今回もあっという間の一週間だったが、プログラム委員として最後の年を無事に終え,脱力感を楽しんでいる所だ。プログラム委員には様々な責務が伴い,大変な作業も存在するが,学会運営のあるべき姿を学ぶにはとても良いチャンスだったと思う。プログラム委員会は半ば閉ざされたクラブという印象を持って入ったのだが、徐々にリベラルな団体へと姿を変えつつあり,この3年間の任期中でも明らかな変化が感じられる。居住地域,性別,専門分野,等々を考慮してメンバーが選ばれており,おそらくダイバーシティの啓発活動が運営方法にも直接,影響しているのだろう。年に一度、立候補を受け付けているので,その際には是非日本からも応募して頂きたい。

 

写真は左から順番に筆者、Profs. Ringsad(Oslo大)、Jäger(London, UCL)、van Buchem(Leidan大)、そして田岡先生(名古屋大)